『騎士団長殺し』村上春樹 著(新潮社)

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『騎士団長殺し』村上春樹 著(新潮社)

こんにちは。お久しぶりです二度寝です。
もうそろそろこの「デジタルファミリー通信」をこっそり「デジタル二度寝通信」にしてやろうかと思っている二度寝です。
西宮えびす様のご利益なのか、おかげさまでいい感じに繁盛しておりまして、制作チームもディレクターも誰一人記事を書く暇がありません。
ですので、申し訳ありませんが今回も若干暇な(今だけな!)二度寝がお送りいたします。

さて、先日村上春樹さんの新刊が発表されました。
新作発表のプレスリリースを目にしてすぐさまネットで予約。実は村上春樹さんの大ファンです。でも『ハルキスト』と呼ばれることには馴染めません。1980年代後半~1990年代初頭に、特定のジャンルのインディーズ・ロック、ポップスを好んで聴いていたら『渋谷系』と呼ばれ「は?」てなったのによく似ています。中にいる人はよくわからないのです。

それはさておき。

『騎士団長殺し』です。

『騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編』
『騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編』 村上春樹 著

前作(『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』)から4年ぶり、長編大作としては2010年の『1Q84』(BOOK3)から7年ぶりとなる『騎士団長殺し』。
ひとりの肖像画家が現実と非現実の境目をうろうろしながら自己の喪失の体験とそれにまつわる様々な(形態の)イデアと対峙しながら苦悩 → 再生するお話です。

「イデア」「メタファー」というキーワードもそうですが、これまでも村上作品に何度も登場する「穴」「闇」「川(流れ)」が今回も重要な要素になっています。
まだ読んでらっしゃらない愚か者ファンの皆様、この時点でわくわくしませんか?(大好物のはず)

他の春樹さんファンはどうなのかわかりませんが、私は村上作品に対してストーリーを特に重要視していないところがあります。
結末の落ち先にたとえどんなに不可解な展開が待っていたとしても、受け入れられるように自らを微調整するにちがいありません(しかも瞬時に)。
それよりも、そこまでの過程で、様々な想像力を駆使しながら辿っていく愉しみを求めているフシがあります。まさにそこが村上作品の醍醐味です。
登場人物の設定や所作、語られる言葉と語られない言葉。それらが村上氏によって放たれ、キャッチしたそれを持ちながらしばらく遊泳し、帰り道を探す。イマジネーションの海を泳いで最終的にはきちんと帰還する。そういうイメージです。
しかもその帰還時の納まり方がなんか気持ちいい。(個人的にはこの遊泳段階で迷子になる方、もしくはイラっとする方がきっと村上作品嫌いなのではと思っています)
この感覚の繰り返しでストーリーが前に進められていく。私はこの体験がとても好きなんです。

随所にユーモアが挟まれるのも村上作品の素晴らしいところですが、今作品は少なかったかもしれません。
ただ、もうこれを言ってしまっていいのかどうかわかりませんが、今回はイデアが形になって顕れること自体が壮大なユーモアではないかと。
実際、登場場面でニヤッとしてしまいました。(シリアスな場面にもかかわらず)

そして、筋金入りの春樹さんファンの方はお気づきかもしれませんが、今回は読んでいる途中で、伏線のための布石がわかってしまうというか、伏線の回収方法を予想できてしまうことが幾度かあり、何度か「お?」となりました。
それを気にしなければとても満足できる作品です。素晴らしい読書体験でした。

これまでの作品を読んできたファンにとっては、とても分かりやすい、期待通りの作品だったと言えるかもしれません。
(いい意味での裏切りもなかったということですが・・)

皆さんはどう読まれましたか?

個人的には続きがある気がしてなりません・・・。
最後「第2部終わり」という記述があったので、もしやこの先「第8部」ぐらいまで行くのではっ?!と期待しています。
でも、今思えば『1Q84』の時もそう思ったんですよねぇ・・・

これまで村上作品を読まず嫌いされてきた方も、とても読みやすい作品なのではないかと思います。
私も今回は身近な村上嫌いにお薦めしてみます。

騎士団長殺し

Writer.

この記事を書いた人

大西 友紀子

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